誰しもが健康のまま長生きしたい、特にご高齢になればなるほどそのように強く思いますね。今回のフレイルという単語はそのひとつのキーワードになります。
フレイルという言葉、皆さん聞いたことはありますでしょうか。
おおまかに説明すると、健康な状態と介護が必要な状態の中間地点にいることを示します。
人は必ず死を迎えます。今これを読んでいる人たちの中にはある程度健康と言える状態の方もいれば介護を要する方もいると思いますが、最終的に死を迎えるプロセスの中で必然的に「要介護状態」を中継します。その要介護状態が短期間であるということはすなわち健康寿命が長いということになります。つまり、健康と要介護状態の狭間である「フレイル」という期間がとても重要だということは理解できるかと思います。フレイルから健康状態へ頑張ってリカバーすることもあれば、残念ながら要介護状態になってしまうこともあるという、非常に大切な転換点であると言えます。
まずは自分自身、あるいはご家族がこのフレイルという段階にあるのかどうかということを認識し、そこから要介護状態にならないように意識して取り組むことが大切なのです。
この説明を聞くと、フレイルは加齢に伴って体がだんだん弱っていくということをイメージするかもしれませんが、実はフレイルとは3つの構成要素から成り立っています。
①身体的フレイル:骨粗鬆症(骨がもろくなっていることで、ちょっとした転倒でも骨折をしてしまい、以後寝たきりになってしまうとか)・変形性関節症(関節がすり減っていき、歩行が困難になるとか)など
②精神・心理的フレイル:認知機能障害(物忘れや妄想などにより一人では日常生活が困難になるとか)・うつ症状(気分の落ち込みや不安により活動性が低下し、それに伴って筋力も低下してくるとか)など
③社会的フレイル:独居・経済的困窮(社会から孤立してしまったり適切な栄養をとったりすることができず、心身ともに弱ってしまうとか)など
これらが3つとも歯車となって負の方向に回転することで介護度が上がってしまいます。逆にいうと、それぞれの歯車を良い方に回す取り組みをすることでいつまでも元気に健康でいられるというわけですね。
フレイルから要介護状態に進行することで、さらなる良くない転機が訪れます。
死亡率の上昇、認知症の発症や進行、施設入所や入院率の増加、ポリファーマシー(多剤内服)、転倒や骨折、医療費の増加など多岐にわたります。
上記の3つのフレイルにどのように立ち向かうか。シンプルに言うと「心身ともに健康で、社会とつながりをもちましょう!」ということになります。
では自分自身、どのような対策を講じれば良いのでしょうか。
まずは食事と運動です。
食事は、バランスよくしっかりとしたカロリー摂取が基本ですが、とくにこのフレイルというのを意識したときにはタンパク質の適切な摂取が非常に重要になります。1日に体重あたり1.2~1.5gのタンパク質をとりましょう(体重50kgでしたら1日60~75g)。タンパク質のもとであるアミノ酸のなかで筋肉の保持や増量に最も重要なのはバリン・ロイシン・イソロイシンという「分枝鎖アミノ酸(BCAA)」なのですが、それを意識しすぎてサプリメントを飲みまくるというのはおすすめしません。食品から良質なタンパク質をとるべきだと考えます。大豆、肉、魚、卵、乳製品をバランスよく摂取し、塩分をとりすぎず炭水化物や油の過剰摂取を控える。これが基本ですね。ただし、腎臓が悪いと言われている人はタンパク質のとりすぎで悪化する恐れがあるので控えた方がよいです。
それからビタミンDの摂取も骨粗鬆症予防に重要です。魚やキノコ類に多く含まれているでの意識してとるようにしましょう。それからビタミンDは日光を浴びることで自分の体から生成されるのです。したがって、しっかりと外に出て日光浴をすることも大切です。
運動に関しては「有酸素運動」と「レジスタンス運動」を組み合わせてやるのが有効です。有酸素運動はウオーキング、レジスタンス運動(いわゆる筋トレ)はスクワットや腹筋トレーニングがおすすめです。
フレイル対策はそれだけでは終わりません。以下の4つも重要です。
①感染予防。肺炎やインフルエンザなどの重い感染症にかかってしまうと、それをきっかけに一気に体力が落ちて要介護状態になってしまうこともあります。
②社会参加の促進。仕事やボランティア、町内会の活動などを通じて社会とつながり、人と人との付き合いを維持することは心身ともに健康に過ごす上でとても大切です。
③口腔機能の維持。かむ力の衰えは食欲や嚥下機能低下と関連があり、低栄養に陥る恐れがあります。定期的な歯科受診をして、義歯の調整や歯周病の予防と治療をしましょう。
④ポリファーマシー対策。つまり、薬の飲み過ぎです。薬による副作用、薬どうしの相互作用で体に悪影響を与えることが、飲んでいる薬の数が増えれば増えるほど多くなります。必要性があって多くの薬が処方されている場合と、無駄に多くなってしまっている場合があるので、自分の判断で断薬することはしないで主治医に相談しましょう。
以上を意識して、健康寿命そして幸せ寿命を延ばしましょうね!
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