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  • 執筆者の写真ShinFukuda

治る認知症と、治らない認知症。


認知症患者は2012年の時点で462万人、団塊世代が皆75歳を迎える2025年には、その数は700万人を越えると言われています。

最近、物忘れがひどいなぁ…と感じる方も多いかと思いますが、安心してください!

ほとんどの場合は心配ありません。

気にしないでも大丈夫です。

誰でもそういうことはありますからね。

では、どのようなときに認知症の心配をすればいいのでしょうか。

それは、「その人らしさ」が失われてくるような場合です。

性格や感情の変化がみられるようだと、やはり認知症を考えなければなりません。

また、他人から物忘れを指摘されるけど、本人はそれを頑なに否定するような場合もそうです。

ただ、そのような状況でも直ちに認知症の診断がつくわけではありません。

まずはそれが、「治る認知症」なのか、「治らない認知症」なのかを区別する必要があります。

認知症というのは基本的には不可逆的(つまりもとには戻らない)なもので、治癒は望めません。

しかし、認知症のように見えて実は全く別の疾患であることもあり、その疾患を治療することで「認知症が治る」のです。

具体的には、脳腫瘍、正常圧水頭症、ビタミン欠乏、アルコール、甲状腺疾患、うつ病などが挙げられます。

したがって初診の方は血液検査をしたり、脳のCTやMRIを撮影したりして、そのような「治る認知症」ではないかということをはじめに見極めます。

認知症は治らない、と言ったら医者の出番はありませんね。

病気を治すことは今の医学では困難なのですが、認知症により「困っている家族」を救うことはできます。

例えば認知症が進んでくると、昼と夜の時間の区別がつかなくなり同居人と全く反対の睡眠サイクルになってしまう。

そうすると、家族が寝たいときに寝られないといったことが起きてしまいます。

あるいは大切なものを失くしてしまうから自分でどこかにしまう。でも自分では見つけられずに同居人が盗んだと信じて止まない。いわゆる「物とられ妄想」です。

このようなことが繰り返されると、家族の日常生活が崩壊してしまいますね。

妄想というのは他人によって訂正することは不可能です。それがどんなに現実離れした事柄であっても、本人に間違いだと認めさせることは無理です。

また、怒りっぽくなってしまったり、逆にすごく気分が落ち込んでしまったりというのも認知症に伴って現れることがあります。

これらの症状を、認知症の「周辺症状」と言います。

このような周辺症状は、薬による治療が期待できるのです。

同居している家族が穏やかに暮らせるというのが、認知症治療において最も大切なことだと考えます。

それでは認知症そのものは治療せずにあきらめるしかないのかというと、そんなことはありません。

いわゆる「抗認知症薬」も認知症治療においてとても重要です。これは、認知症の進行を遅らせる効果があります。

認知症と早期に診断するのは難しいのですが、早めに治療を開始することで予後が良くなることが期待できます。

また、抗認知症薬によっても周辺症状の改善がみられることもあるので、見かけ上、認知症が改善したようにみえることもあります。

しかし、気を付けなければならないことがあります。この抗認知症薬の使い方を誤ると、逆に症状が悪化することがあるのです。

薬を始めて悪くなり、薬が効かないからだと思ってさらに薬が増え、さらに悪くなるといったことも、実はよくあるのです。

人によって合う薬、合わない薬があります。また適切な用量も個人差がかなりあります。

したがって大切なのは、薬を開始してからの様子を家族が注意深く見守ることです。そしてそれを医者に伝えてください。医者はそれによって微調整しなければなりません。

逆に言うと、一発目の処方でその人にピタッと合わせるというのは非常に難しいのです。

なによりも家族の観察が重要です。

一言で認知症と言っても、本当にいろんなバリエーションがあり、さらに患者本人をとりまく家庭環境も千差万別です。

型どおりの治療をしていれば大丈夫、なんてこともありません。

ひとりひとりと向き合う。

これこそが、最も大切なことだと思います。

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