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執筆者の写真ShinFukuda

最強の抗リウマチ薬?「JAK阻害薬」はもはや最後の切り札ではない。帯状疱疹の話も含めて。


JAK阻害薬は、最も新しい抗リウマチ薬で、「最後の切り札」的な認識のもとで使用されておりました。

そもそも、なぜ最後の切り札だったのでしょうか。

それは、JAKを阻害すること自体が、「え!?人間の体の中でそんなところをブロックしちゃって大丈夫の!?」という感じだったからです。

非常におそるおそる使っていたというのが当初の状況でした。

従来からある抗リウマチ薬でも効かず、バイオ製剤を何種類か使ってみたけどまだ炎症がとれずに患者さんは苦しんでいる。ええい、もうJAK阻害薬いくしかない!!

という感じでした。

その結果、非常の高い効果を実感するのですが、それでも副作用の出現にハラハラドキドキしながら患者さんの来院を待つというのが市場に出始めた2013年頃のはなし。

その後5年近くに渡ってゼルヤンツを使用した患者さん「全員」の詳細なデータを集め続けました。特に大切なのはその「有害事象」。つまり予期せず起こってしまった患者さんにとって良くないイベントです。

しかし、現時点での結論は…

① 重篤な感染症にかかるリスクはゼルヤンツを使っていない人に比べて上昇する。

② 悪性腫瘍の発症はあるものの、使ってない人と頻度は変わらない。

というものでした。

リウマチ医にとっては予想通りの結果であり、一方でホッとする結果でした。

①に関しては心配ではありますが、ごくごく当たり前の結果で、「ちゃんとした専門医が気をつける」ことによってなんとかなります。

②ですが、もし悪性腫瘍が増えてしまうようでしたらものすごくこの薬を使うテンションが下がるところでしたが、大丈夫でした。

そしてこれは、バイオ製剤とほぼ同じような結果です。

考えてもみてください。JAK阻害薬とバイオ製剤を比較して…

・効果が同等

・副作用も同等

・値段も同等

・かたや注射、かたや飲み薬

さて、どっちがいいですか?というはなしです。

JAK阻害薬の使用を考慮される順番ですが、実際に以下のように変わりつつあります。

<過去>

あらゆる抗リウマチ薬を使っても治らない場合

バイオ製剤を1種類使って効果がなかった場合

従来の内服薬が効かない場合(バイオ製剤より先に使用)

メトトレキサートと併用で使う

従来の内服薬が効かない場合(バイオ製剤より先に使用)

メトトレキサートをやめてJAK阻害薬に切り替える

<未来>

ごく近い将来に、ここまでの認識に変わっていくと個人的には思っています。

さらに進んで、全ての患者にいきなりJAK阻害薬、とはならないと思いますが。

ただ、ひとつだけ懸念点があります。

それは、

帯状疱疹

です。



そもそも帯状疱疹とは。

みなさん、水疱瘡(みずぼうそう)は知ってますね。

以前かかったことのある方、今でもずっと水疱瘡なんですっていう人はいないと思うのですが、実は治ったと思ってもそのウイルスは体に潜んでいるのです。

悪さはせずにじっとしているだけなのですが、「神経」を好んで住処にします。

なんらかの原因で免疫が弱ってしまった時に、ここぞとばかりにワッと増えます。増えて、炎症を起こします。神経が好きなので、神経を伝わって皮膚まで顔を出して、そこで炎症を起こすことで発疹や水疱ができます。そして痛い。「神経痛」です。

JAK阻害薬を使っていると、この帯状疱疹の発症が増えてしまいます。同じように免疫を抑え込むバイオ製剤よりも、何故だか発症率が明確に多いのです。

命にかかわるような重篤な状態にはなることは稀ですが、なにしろ痛いですし、場合によっては「帯状疱疹後神経痛」といって皮膚はきれいになっても痛みだけずーっと残ってしまうということもありますし、目の近くとか耳の近くにできてしまうとそれなりにマズイことになります。

ではどうしたらいいのか。

今のところ、予防することはできません。これは後述します。

なので、早いところ気づいて治療をしてあげるしかありません。

JAK阻害薬を使っている患者さんは、帯状疱疹とはどういうものかということをよく理解しておく必要があります。

いくら「最強」の薬でもこんな痛い病気になりやすいのなら嫌だと思う人が多いでしょう。私も正直自分では好んで飲みたいとは思いません。

しかし、今回私が「最強」とタイトルに書いた理由があります。

それは、帯状疱疹のワクチンが近々登場するからです!

鬼に金棒とはこのことです。

最強たるゆえんはこれです。

厳密には、ワクチンは現時点で市場に出回っております。

でもそれは「生ワクチン」です。

リウマチの薬を使っているような人たちには禁忌です。絶対に接種してはいけません。なぜなら「生」だから。生きているウイルスを注射するようなもので、免疫の弱っている状態で接種したらどうなるかは想像ができますね。

一方、いま市場に出す準備をしているのが、「生ではないワクチン」です。これは安全です。そして、おそらく今年中に使えるようになるのではないかというウワサをあちこちから聞きます。あくまでメーカーさんからのウワサなので詳細はまだ不明ですが。

私見ですが、帯状疱疹のワクチンが市場にでたら、JAK阻害薬を使う人全員に接種するようになると思います。

それがいつになるか、乞うご期待です。

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