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執筆者の写真ShinFukuda

「不定愁訴」の治療方法。MUSとはなにか。


MUSという言葉があります。


Medically Unexplained Symptomsの略です。

つまり、「医学的に説明不能な症状」という意味です。


どういうことでしょうか。


たとえば、「胸が痛い」という方。

しばらく我慢したけど痛みが消えないので病院に行きました。

医者は、胸痛と聞いて考えるのは心臓とか肺、あるいは皮膚などです。


診察しても異常なし。

レントゲンとっても異常なし。

心電図をとっても異常なし。

血液検査をしても異常なし。


「はい、大丈夫でしたよ!」

なんて医者は言いますが、その人にとっては大丈夫ではないんです。だって痛みがあるのだから。


これがMUSですね。


ただ、ここから先は2つに分かれます。

1.まあ痛いけど、大きな心配が無いようだから安心した。我慢しよう~!

2.原因がわからないってどういうこと??こんなに痛いのに。なんとかして~!


1の人はこれでさよならします。満足してお帰りになります。


問題は2の人です。

ほとんどの内科では、そのまま追い返されてしまいます。いたいのに。

「不定愁訴」と片付けられてしまいます。


でもこういった症状は、別のアプローチで治るのです!


それは、心のアプローチです。


通常、内科にいっても身体的にどうかという観点で診察や検査が進められます。

身体的に異常がない場合、精神的な問題だと言われることもあると思います。

それはそれで間違いではないのですが、身体と精神をわけて考えることは間違いだと思ってます。

おなじ患者さんを、心という別角度から見直すことが、解決の糸口となります。


心も、体の一部です。

他人の意志によって、自分の体が痛めつけられているわけではないですよね。


心の問題で体も悪くなるし、体の問題で心が悪くなることもあります。

一旦負のスパイラルに陥ってしまうと、なかなか自力では抜け出すことができません。


自力で抜け出せないところをお手伝いするのが、私たちの役目だと思っています。




さて、このMUS。つまり患者さんはつらい症状で困っているのに、いくら検査をしてもなんの異常もないという状態。


抗うつ薬を使うことで改善が期待できます。


SSRIと言われる、パキシルやジェイゾロフト、レクサプロといった薬。

SNRIと言われる、サインバルタなどの薬。


これらが、場合によっては人生が変わるほどの著明な効果を表すこともあります。

そこまでいかなくても、長年困っていた症状が楽になる、という方は大勢います。



ではMUSだと思ったらただこれらの薬を処方すればいいだけか?


答えは、NO!! です。


そんなことをしたら、


「私はうつ病じゃないのに…」


と、抵抗をしめされるでしょう。

当然です。うつ病の方ですら、薬に抵抗があることが少なくありませんからね。


「うつ病に関する基本的考え」でも述べましたが、薬はあくまで補助的なものです。

よくなるきっかけを与えるものです。


一緒に、症状に向き合う。

自分をとりまく環境に、しっかり向き合う。

医者も患者さんも、一緒にです。


薬は、とくに抗うつ薬なんてものは、「信じること」によってその効果は何倍にもなります。

逆に、信じないで飲むと、副作用ばかり出てきます。


その証拠に、抗うつ薬の臨床試験(薬を発売する前の調査)では、不思議なことが起こります。


うつ病の人に、抗うつ薬とプラセボ(偽薬)をどちらかわからずに飲ませると、

当然抗うつ薬(本物)の効果はでますが、

あまり遜色のないくらい、プラセボ(偽物)でも効果がでるのです。


同様に、副作用もプラセボで結構出てしまうんです。


薬でもなんでもないものを、効果があると信じて飲むだけで、うつ病がよくなるんですね。


ということで、大切なのは、医者との信頼関係、そして、薬を信じることです。

それがあれば、MUS(不定愁訴)だって治ってしまいます。


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